ナビィの恋

見終えたときにあふれ出るのはなんとも不思議な気持ちだった。見ている最中も、時間の流れがいつもよりずっと遅いような感覚なのに、まだ終わらないの?というようなつまらない映画を見ているときの気持ちには全くならなかった。最初から最後まで、ゆっくりと確実に進む時間の流れを感じることの出来るような気分になれる、そういう作品だった。
本作品と言えば、なんといっても平良とみの好演がいろいろなところで話題になったが、個人的にはそれよりもおじい役の登川誠仁の存在感に引き込まれた。英語と沖縄なまりが適度に混ざり合った不思議な語り口調。ことあるごとに見せる三線と味のある歌声。とても素晴らしかった。最初から最後まで、おばあに対する愛情を飾らずに表現していた登川誠仁の存在が、個人的に一番心に響きつづけた。ナビィの恋公式サイトの彼の紹介文(http://www.shirous.com/nabbie/index01.htm)を見ると、監督が頼みに頼んで実現したキャスティングとある。なるほどこのキャスティングが実現したことが、満塁ホームラン級グッジョブなんだろうな。
もちろん、若かりし頃の恋を貫いたおばあ(平良とみ)の演技もとても良かった。常にあったかい気持ちにさせるしゃべり方で、不思議と引き込まれるようだった。


この映画に引き込まれたのは、沖縄にしっかりと根を張った出演者たちの懐の深さを見られたような気持ちになれたことと、あとは全編をとおして鳴り響く様々な音楽の存在のおかげだ。沖縄民謡に限らず、フィドル奏者の演奏や、オペラ歌手の情感がこもった歌声もとても良かった。その中でも、やっぱり登川誠仁の歌と三線はひときわ際だつ存在感を放っていた。彼が即興で歌っていた大きいおっぱい・小さいおっぱいのうたなんかも、なんかほのぼのとした気持ちにさせてくれる、映画にとって最高の味付けになっていたと思うし。


見終わったときに不思議と涙がじんわり目尻にわき出てきたのも、自分の中でいろいろな気持ちが混ざり合った結果からであり、そこにはきっとこの映画に出会えた喜びも混ざっていたと思う。
自分は、これまで好きな映画をあげてって言われると「ジョゼと虎と魚たち」をあげていたけれど、そこに「ナビィの恋」もこれからは付け足すようだな。